最近は、とても優しい親が増えているように思えます。
一昔前(30~50年前)よりは、「厳しいしつけ」をするケースは減ってきているのかな、と。
もちろん虐待などに関して大きな社会問題としてみんなが知るようになってきたというのも大きいと思いますが、虐待は極端な例としても、とにかくみんな、優しい。
私(妻)も、「自分は厳しくしつけられた」と思っていますが、自分の子どもには厳しいしつけをせず、優しく接しています。
この傾向はなぜなのかな、と考えると、多くの親が
「厳しく育てても、何も良いことがない」
と気づいているからなのではないかな、と思います。
そして私も、色々調べた結果、
厳しいしつけは「害」でしかない
という、わりと極端な結論に達しています。
厳しいしつけは、親と子ども、両方にとって、デメリットばかりだ、
と考えています。
その理由について話していきたいと思います。
厳しいしつけとは?

育児や教育や毒親についての本を、今まで100冊以上、読んできました。
毒親というのはここ数年、注目されているワードですが、「毒になる親」という意味で、子どもの人生に多大な悪影響を及ぼす(時には虐待を含む)行為をする親を指します。
「厳しいしつけ」と一言でいっても、指す厳しさの範囲は広いですが、この記事ではかなり広い範囲でのしつけを指したいと思います。
毒親や虐待はもちろん、スパルタ・教育ママ・叱る・不機嫌な調子で話す・命令する・頭ごなしの言い方をする。 これらを全て、「厳しいしつけ」にここでは含めたいです。
もちろん、親も人間なので、体調やその他のコンディションにより、不機嫌な日もあり、常に「すごく優しい」というわけにはいかないでしょう。
それ自体は、夫婦間やルームメイトなどでも同じですよね。
ただ、ここでいう「厳しいしつけ」の場合は、親→子への上下関係が厳然と存在する、というのが大きな違いかなと思います。
厳しいしつけ=子どもの人生をコントロールしたいという欲求
厳しいしつけには、こういった前提や考えがあると思います。
- 子どもは未熟な存在である
- だから、親が社会のなんたるかを教えてあげなければならない
- そのことが子どもの将来のためになる
- ひいては、親が自分自身の達成感にもつながる(子育ての成功)
- 親が理想として思い描く像に近づけることをゴールとしている
この考えの根底には、「親が子どもの人生をコントロールできる」という前提が潜んでいます。
もちろん、このように言葉として認識している親は少ないでしょうし、もし聞いたら「子どものためにやっている」と答えるでしょう。
しかし、やっている行動は「子どもの人生をコントロールしようとしている」ということ以外の何ものでもありません。
「コントロール」という言葉がしっくりこないなら、「親の思うように育ってほしい、行動してほしい」と考える、と言い換えても良いかもしれません。
厳しいしつけをされた子どもの末路

子どもが自己肯定感を持てなくなる
子どもにとってのデメリットで一番大きいものは、やはりコレかな、と思います。
私たちは「育児のゴールは、子どもたちが自己肯定感を持つこと」と思っているくらい、自己肯定感の肯定派です。笑
正直、自己肯定感さえ持つことができれば、人生怖いものなしだと思うんですよね。
私(妻)は自己肯定感がかなり低いですが、夫は自己肯定感がとても高いです。

夫を見ていて思うのが、自己肯定感が高い人というのは、何をしていても、基本的な「ハッピー値」みたいなものが高いんですよね。
「自分であれば大丈夫」みたいな、自分への絶対的な信頼感がある。
対して、自己肯定感が低い人は、ベースとして「自信のなさ」があります。
自信を持つとしたら、
- 仕事で成功する
- お金持ちになる
- 結婚、子どもを持つなど、世間で幸せと言われていることをする
といったような条件が「あるとき」に限られてしまいます。
つまり、「仕事で成功して初めて、自信が持てる」みたいな感じですね。
逆に、成功しなければ自信が持てなかったり、シングルだと自信が持てなかったり、何かしら外付けの条件によって、自信の度合いが大きく左右されてしまうわけです。
根本的な自信がないため、より良い自分になろうと努力する人は多いですが、達成しても完全に幸せを感じられなかったり、燃え尽き症候群に悩まされたりします。
世間で言われるような幸せの条件を満たさなかったとしても、「自分であれば大丈夫」という気持ちがあれば、最強だと思いませんか。
子どもが自分で判断できない
厳しいしつけをしていると、子どもは親の顔色をうかがうようになります。
何をするにも、まずは親にお伺いを立てる。
誰でも怒られるのは嫌だし、何より、子どもは「親に好かれたい」という強い願望がありますからね。
だんだん、子どもは自分では何も決められなくなり、自分が何をやりたいのか、何が好きなのか、嫌いなのかもわからなくなります。
果たして、子どもの人生をコントロールしようとする親と、コントロールされたい子どもが出来上がります。
いわゆるマザコンなんかも、これの一例ですかね。
進学、就職、結婚など、人生の大事な節目の決断も、親が口出ししたり、決めたりするようになります。
それで親が良い方向に導いていけたら良いと思いますが、親が思う「良い人生」というのも、30年以上前の価値観なわけです。
つまり、古い。
現代はかつてないスピードで色々なことが変化していってます。
親が実践して良かったと思う人生が、子どもが大人になる頃にはすでに相当に古くて使えない、時代に合わないものになっている可能性が高い。というか、確実にそうなります。
そう考えると、どのようなことが起きたとしても、どのような状況になったとしても、「自分は大丈夫」と思える自己肯定感や、自分で情報を集めて、判断していくことができる能力が必要であり、厳しいしつけがそれらの能力を奪ってしまう、と考えることができます。
まさに、「害」となるわけです。
日本に蔓延している自己否定感
今現在、30代以上の人は特に、厳しくしつけられてきた人が多いので、私の周りをみても、ものすごく自己肯定感が低い人が多いです。
もちろん、私もその一人。
海外で暮らしてみて、自己肯定感が高い人が多いことに驚きました。
やはり日本は群を抜いて自己肯定感の低い国だと思います。
厳しいしつけだけが原因とも言い切れませんが、やはり自己肯定感が低いのは生きづらいです。
たぶん、そう感じている人が多いからこそ、「自己肯定感」というワードが注目され、本なども売れているのでしょう。
そもそも、時代的に必要がない
昔は、変化のスピードが遅かったこともあり、親の生き方が子どもにもそのまま適用できるようなところがありました。
また、厳しいしつけをして「いい子」を育てることで、男性の場合は良い職業に付けたり、女性の場合は良いところにお嫁に行けたり。
さらに、今でいうワンオペ育児が当たりまえ&子どもが多かったため、厳しくしないと、やっていけない、という事情もあったでしょう。
子育てグッズや無料動画もない時代の子育ては、さぞや過酷だったであろうと・・・
しかし、今はそういう時代ではありません。
時代が変わった今では、厳しいしつけのメリットは消滅しました。
厳しいしつけは、親にとってのデメリットも

親である自分自身が嫌な気分になる
私は、基本的に子どもには優しく、機嫌よく接したいと思っていますが、10日に1回くらいはやっぱりイラついて不機嫌な対応をしてしまうこともあります。
そういう時って、発した後にものすごく嫌な気分になるのですよね・・・
もちろん子どもも、それに対して泣いたりぐずったりしてしまいますし、そうなるとイラつきが倍増したりして。
たぶん世の中の親がほとんど経験したことがあるのでは、と思います。
だから、最初から怒らないほうが良いわけです。
親子関係が悪くなる
厳しいしつけを日常的に、ずっと続けていった場合、最悪のケースでは、親子関係が悪くなることもおおいにあり得ます。
親としては「子どものためを思って・・・」という気持ちかもしれませんが、子どもにしてみたら、上で書いたような「コントロール」という側面を感じて息苦しくなることが多いです。
子どもの生まれつきの性格によりますが、もし自立心が高い子どもの場合は、早々に親離れをして一人暮らしを始め、親にはほとんど連絡を取らない、ということもよく見るケースです。
特に男の子のほうが、そういうケースは多いかもしれません。
そして、親もそこまでの事態を想定して、「そうなっても平気」という覚悟で厳しいしつけをするのであれば、良いのですが、音信不通になって、デメリットが大きいのは親のほうです。
子どもは、親と音信不通になることはもちろん嫌ですが、嫌と感じる暇もなく自分の人生を忙しく生きていることも多い。
しかし親は子どもが自立したタイミングでヒマになります。
子どもと疎遠になっていると、孫を見ることも叶わなくなります。
かなりしんどいと思いますよ。
優しい育児をしたからといって、子どもとすごく近い関係で居続ける、なんていう保証はないわけですが、少なくとも厳しいしつけをしたら、離れる可能性は大きくなります。
これは周りの人たちを見ていても断言できます。
「厳しいしつけはダメ」を裏付ける5冊の本
このテーマについては自分の中で大きな課題として、自分のケースだけではなく、たくさんの人に話を聞いたり色々な人のケースを観察したり、ありとあらゆる本も読んできました。
その中で、「ああ、やっぱり厳しいしつけはダメだ!」と実感できた、5冊の本をえりすぐりでご紹介します。
他にもたくさん本はあるのですが、ここに挙げるのはどれも、特に強く一読をお勧めしたい本たちです。
毒親に育てられた漫画家
コミックエッセイです。
作者のわたなべぽんさんは、毒親(お母さん)に育てられたという経験を持っています。
ひどい時には、寒い冬の日に裸で家の外に出されたり・・・
漫画家になるために上京すると決めた時も、非常に苦労したようです。
現状はというと、優しい旦那様と結婚をされていらっしゃいますが、
- 100キロを超える肥満体になった
- すごい汚部屋に住んでいた
という壮絶体験を持っており、それぞれの克服する過程を別のコミックエッセイ本に描いているのですが、とにかく全体を通して
自分に極端に自信がない
というイメージの方です。
何かというと、すぐに「自分なんて・・・」と言ってしまう感じですね。
ご自分で、問題を解決していく過程で、根本にあるのは、この自信のなさであることを自覚しているようです。
そして、この本の中では、結婚して長いので「子どもは?」と周りから聞かれるけども、自分に自信がないので、子どもを持つ気になれない・・・と言っています。
毒親に育てられたから、自信がなくて、子どもを持てない・・・というのは、なかなか辛いものがあるなぁ、と思ってしまいます。
(子どもを持つ・持たないの是非に関しては、ここでは焦点にしていません)
また、どうしても母親のことが許せず、絶縁していた時期もありましたが、今はつかず離れずの関係を保っているようです。
ママが幸せ=子どもの幸せ
他の記事でも紹介したことがありますが、この本は私のバイブルと言っても良いでしょう。
この本の中では、
世間の目を意識した子育てだと親が苦しくなるので
自分が幸せになるように努力をしましょう。
ママが幸せだとパパや子どもももれなく幸せになるので、家族の幸せにつながる。
ということを書いています。
この場合、世間の目を意識した子育て=厳しいしつけ と言うことができるでしょう。
人に迷惑をかけないように・・・
恥ずかしくないように・・・
母親である私が責められるのが嫌だから・・・
と言う気持ちで子育てをしている人が大半でしょう。
しかし、そのことが、自分がイライラしたり落ち込んだり、夫婦や親子関係を悪くすることにつながってしまいます。
以前、夫婦関係について同じような考えの記事を書いたことがありますので、良ければ見てみてください。

厳しく育てると犯罪にさえつながる
かなりショッキングなタイトルのこの本。
しかし、読んでみるとけっこう納得できます。
犯罪者の多くは、幼少期に親から虐待やモラハラを受けて育っている、ということらしいです。
- 人に迷惑をかけるな
- 近所の人に恥ずかしいことをするな
- 悪いことをしたら謝れ
- 男の子は泣くな、弱音をはくな
- いつも笑顔でニコニコして
といったような、親がよく言いがちなことを繰り返し言われて育ったケースも多いといいます。
虐待はしないまでも、こういったセリフを子どもに言っている親も多いのではないでしょうか。
「え、なぜこのセリフがいけないの?」と抵抗感がある人もいるかと思いますが、そういう人ほどこの本を読んでみてほしいです。
「他人に迷惑をかけない、いつも笑顔の、いい子」を育てようとすることの弊害が、よく理解できると思います。
子どもの成長に必要なのは親への安心感
テレビに出ている、有名人の尾木ママの本です。
とても優しい口調で書かれているので、がんばっているパパ、ママにとってはけっこう響く文章があったりするでしょう。
この本では、怖い顔をして怒ると、子どもは「怖い」としか思わなくなり、その内容を聞いていないことが多いので意味がない、と言っています。
確かに、私の友達も、「怒られた記憶しかない」と言っていましたので、真実かと思います。
優しくても言い方さえ工夫すれば、ちゃんと子どもは納得して動いてくれるものよ、と言っています。
子どもの性格はほとんど遺伝で決まる
「厳しいしつけをしよう」と親が考える動機の1つは「子どもの性格・習慣を良いものへと親が導いてあげなければいけない」ということだと思います。
しかし、この本に書いてあることによれば、子どもの性格というのはほぼ遺伝によって決まり、親のしつけどころか、家庭環境でさえも、子どもの人格形成には影響をあまり与えないということがわかります。
この本によると、総計1455万8903人の双生児を対象としたメタ分析の結果、「やる気」「集中力」「仕事と雇用」「パーソナリティ障害」などの家庭環境が与える影響は0~3%にとどまっています。
これらの項目は、世間的には「育児や家庭環境が大きく影響を与える」と言われてきたものでしょう。
その他の項目も、0~20%という数値にとどまっています。
作者の橘さんは「子育ての努力には意味がない」と言い切っています。
優しい育児の結果はわがままな子ども?

厳しいしつけをせずに育てたら、「わがままな人」に育ってしまうのではないか、と心配する親もいるでしょう。
でも、今の20代、30代の人などでも「優しい育児で育ってきた」という人が居たりするので、そういう人を見てみると良いと思います。
私の夫(30代)も親から怒られずに育ち、自己肯定感のカタマリみたいな人です。
そして、厳しくしつけられて育った私。
どちらがワガママかというと・・・圧倒的に私です。笑
この法則は、驚くほど、他の人にも当てはまります。
親に優しく育てられてきた人は、ワガママどころかむしろ性格が良い場合が多いように思います。
これは、自己肯定感が高いことによる、精神的な余裕かなぁと分析しております。
一方、自己肯定感が低いと、「自分に自信が持てない」というのが根底にあるため、すぐにマウント取ろうとしたり、嫉妬したり、変なワガママ言ったり、もうこじらせちゃって大変ですよ。笑
他人に向かってこんな風な発散をしない人も居ますが、その場合は内でため込むせいで心を病んでしまったりね・・・。
自己肯定感が高いと、「心の波」が安定しており、浮き沈みが少ない、というのが私の印象です。
そして、上でも書いたように、「ワガママかどうか」の人格は、遺伝による割合がけっこう高かったりするので、そもそもどんな育て方をしようが関係ないかも、という説もあります・・・。
しつけではなく、教育

うちはまだ子どもが4歳、2歳なので、これは私の理想でしかないのですが。
うちでは、しつけはほとんどせず、勉強に関してもまったく口出しするつもりはありません。
しかし、下記のような「教育」は、今の日本の学校教育ではほとんどカバーしていないため、家庭でおこなっていく必要があるかなと思っています。
- 食育
- 生活リズム
- お金
- 性
- 防犯
これについては、いくつか夫が記事を書いています。



私は、「門限」がものすごく厳しい家庭に育ち、大学生になっても、門限を少しでも過ぎて帰宅すると、すごい勢いで怒鳴られました。その出来事については今でも心に残っているくらいです。
トラウマというほどでもないですが、親との関係がかなり悪くなる1つの理由と言っても良いかもしれません。
自分が子どもの立場だったから言えますが、はっきり言って、門限があろうが無かろうが、そんなに羽目外しませんよ。変わらないです。
特に、私は真面目な子だったので、ちょっと遊んだからといっても、親が心配するようなことはやりません。
結局、親が子どものことを信頼できないから、門限というものを設けるわけです。
でも、これって、「性教育」と「防犯教育」をすれば、解決するのでは、と思うのですよね。
家庭内でオープンにそういったことをしっかり話し合っていくことで、信頼関係にもつながるし、門限などを設けなくても自分の子どものことを信じられるし、そのほうがお互いにとっても絶対に良いはずです。
たぶん、「門限」を設けて、それを守らせるということよりも、性教育や防犯教育をコツコツしていくほうが難しいことでしょうし、今は私の理想でしかないかもしれません。
でも私たちはそういう風にしていきたいな、と考えています。
まとめ
というわけで、厳しくしつけをすることは
- そもそも意味がない
- 子どもにとってのデメリット
- 親にとってのデメリット
- 時代に合ってない
・・・と考えることができます。
「意味がない」としたら、労力をかけるのが無駄(デメリット)ですし、もはや害しかありません。
喫煙と同じ!
もしあなたが厳しい育児をやっているなら、今すぐやめて、楽な育児をしましょう。
そして、子どもの人生をコントロールするのではなく、自分の人生の幸せを追求しましょう。